<神楽>
日本芸能の原点ともいえる「神楽」、その起源は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が、天の岩戸(あまのいわと)へ籬もったとき、天鈿女命(あめのうずめのみこと)が岩戸の前で舞を舞ったことにあるといわれている。また、神楽という言葉は、神座(カムクラ・カンザ)からでたものともいわれており、 神座とは神々が降臨の際、身を宿らせるところという意味で、そこで行われている神楽全体を神楽というようになったと考えられている。現代においても 神楽は、「宮廷神楽」と「里神楽」*の大きく二つに分けられ各地で行われているが、双方とも共通して大陸からの芸能伝搬という歴史的背景を様々な点で色濃く残しているものと考えられる。

* 「宮廷神楽」とは、宮中で行われている神楽で、古代において大陸からわが国に伝えられた雅楽(ががく)や伎楽(ぎがく)であり、一般の神社の神事芸能として行われる「里神楽」は、田植行事の中の神事舞から発生したと考えられている 。
<今様神楽〜天の岩戸>
「シルクロード」、それはまさに文化の流れる道であった。東の終着駅といわれる日本はそんな文化が際限なく流れ込む「坩堝(るつぼ)」であったに違いない。遣隋使に始まり最後の遣唐使が送られるまでの(7〜9世紀)約二百年間、人々はあふれんばかりの好奇心と豊かな創造性を駆使して「渡来の文化」を吸収し「日本の文化」を創っていった。「今様神楽」は2001年より公演を重ねてきた日本・インドネシアによるコラボレーション芸能「南洋神楽」(構成・演出/和田啓)の発想をもとに、日本芸能の原点としての「神楽」を現代に再構築しようという作品である。特に、アジアの視点を重視し、文化伝来ルート「草原・オアシスのシルクロード」からは韓国、「海のシルクロード」からインドネシアとそれぞれのルートからの融合を試み、さらには音楽の基本となるリズム形式にはシルクロードの交差点であるアラブの古典音楽からも表現方法を取り入れるという、まさに「今様」と呼ぶにふさわしい「神楽」である。その記念すべき第一作となるのがこの「今様神楽〜天の岩戸」である。

構成・演出/和田啓
舞踊/小谷野哲朗(バリ仮面舞踊) ディディ・ニニ・トウォ(ジャワ仮面舞踊)
   グループシナウィ(韓国仮面舞踊)
演奏/ポタラカ(日本) グループシナウィ(韓国) 他

インドネシア・朝鮮半島仮面舞踊と音楽の融合のよるオリジナル仮面舞踊劇
「天の岩戸」
素戔嗚尊は天を治める姉・天照大神との諍いの中で誓約をたてるが乱暴を働いたため天照大神は「天の岩屋」の戸をあけて隠れてしまう。下界はことごとく暗くなり、さまざまな災いが起こり始める。なんとか天照大神を出そうと神々は岩屋の前で宴を開く。最後に「天の宇受売命」が踊りを踊り人々は大きな声で笑い出す。不思議に思った「天照大神」は岩戸を少しあけてみると自分とそっくりの神がそこに。実は鏡に映った天照大神自身だったのだが、こらえきれず表へ顔を出したとたんに「手力男の神」は大きく岩戸を開き「天照大神」は再び表の世界に出でて、天・下界ともにひかりに包まれる。

天の岩戸 主な構成

国造〜仮面披露
韓国・インドネシアの音楽を融合した楽曲のなか、群舞により様々な仮面が登場人物と共に披露され、天照大神と素戔嗚尊の登場となる。
それぞれの仮面の持つ特徴が表現される。
誓約(うけい)
素戔嗚尊の謀反の心のない証として二人の神は誓約(うけい)を交わすが、素戔嗚尊の乱暴に怒った天照大神は天の岩屋へ隠れてしまう。作品中、物語性を最も強く出している部分で各国の踊りの中にみられる所作(パントマイムのように動きで感情や状況を表す)を多く取り入れている。
天の岩戸
岩屋の前で神々が芸能を披露する。ここで演じられるのは韓国伝統仮面舞踊、インドネシア伝統仮面舞踊、天照大神の登場となってからは「チルチェ」という豊穣を祈る時に演じられる韓国の独特のリズム(5+5+3+3+5+5+10という複雑な拍子構成を持っている)にバリのガムランやアラブの打楽器を融合させた全く新しい音楽で再び光が差した天・下界の喜びに満ちた踊りが演じられる。